貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−5(最終回)

それは、単に始まりの終わりでしかなかった。


貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−5    技術開発センター

エピローグ −改良−

 結婚式から帰ってすぐ、ゼンマイの改良に取り掛かることにした。回転ユニットはそのままでいいだろう。問題は取っ手だ。ここでまた軸への取り付け方法に苦労することとなる。時間をかけて各種の素材を吟味し考え抜いた末、ゼンマイの軸をパイプ状とし、内部に特殊ゴムを詰めてその中に軸を差し込むスタイルとした。これならば適度な抵抗で空回りし、金属と違って変形してもきちんと元に戻る。取っ手の形状も変更、資料を検索しておもちゃのゼンマイ系であったデザインを時計のゼンマイ系へと変更し、軸方向のサイズは約2/3に圧縮、取り回しを楽にした。身体に近い側のクリアランスは試作機と同程度を維持し、服装の自由度を確保した。特殊工具を用いて左右に穴も開けることにした。
 
 その後増産の際、色々な服に対応できるよう当初は黒であった台を透明に変更。また和服にも対応すべくパーツの取り付け位置や軸の角度を変更したマダム専用機、ステージ用の大型の取っ手も新たに開発した。現在、チャイナドレスその他の各種コスチュームへの対応、ゴールド、コッパーなどの色違い、ぜんまいの付いている(既存の)キャラクター型の取っ手などを開発中である。大会当日をご期待いただきたい。


 眼鏡時空5参加時にはごく当たり前の様に動いているゼンマイだが、これも当初は幹部の頭の中だけにしか存在しなかったものである。カフェも同じだが、妄想を実現したものは実に面白い。妄想を実現していく過程はもっと面白いものだ。我々はこれからも多くの妄想を努力と工夫により現実のものとし続けるだろう。一度実現してしまうと様々な問題点が検証され、変更、改良を余儀なくされることも多い。当初考えていたものとは異なる姿になるかもしれない。それもまた面白いではないか。
 最後に、現在は光るメガネ・カエルの卵に見えるデザートなどを開発・改良中であることを報告しておこう。我々は常に挑戦し続けるのである。

貴女の妄想も、叶えてみませんか?



  この物語は全てフィクションであり、
     現実の団体や個人とは何の関係もありません。
  まあ、そう言っておきましょう。
  判断するのは、あなたです。


「ゼンマイ開発記」の連載はこれでお終いです。
ご意見、ご感想はコメント、もしくはメールにてお願いします。
筆者は次期連載を構想中です。「ゼンマイを継ぐモノ(仮)」お楽しみに!

貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−4

この感動は、かのフランケンシュタイン博士と同じであるに違いない。


貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−4    技術開発センター

起動実験

 何事も思った通りにはうまく行かないものである。研究だけでなく今回もその例に漏れることはなかった。ようやく形を整えて表面加工まで終了した時、すでに当日の朝になってしまっていた。
 早○女博士がゲッ○ー試作機を真っ白のまま運用した事情にうなずきながら急いで車に荷物を積み込み出発したが、休日朝の下り方向は混雑するもの。会場に着いたときは既に式は終わり、最後の乾杯に潜り込むのがやっとであった。
 2次会の会場に到着した後、自分の部屋でゼンマイを組み立てて恐る恐るスイッチを入れてみる。ジーッと音を立ててゼンマイはゆっくりと回り始めた。起動そのものは成功だ。2次会も夜の部に入ってからゼンマイを取り出して公開した。
 時間がない中、デザインには時間をかけずに容易に加工できる形状で作ったため、
「これ、何の形?」
と指摘する声もあったが、実際に動くという点では大い評価された。1年前にゼンマイの説明をした幹部自らが、用意してあったメイドロボの装備と共に試作品のゼンマイを装着してくれた。やはり、メイドロボのゼンマイはメイドロボについている姿がいい。ロボの背中でゆっくりと回るゼンマイを見ると喜びもひとしおであった。
 だがしかし、その場ですぐ問題も明らかになった。軸が長すぎてメイドロボが椅子に座れない。他人にすぐに当たる。そして何より、酔っ払いがゼンマイを巻こうとしてしまうのだ。おかげで、金具を流用した取り付け部は一晩の間に何回も直さなければならなかった。


  この物語は、やっぱりフィクションということで・・・

貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−3

国境の長いトンネルを抜けると、そこはフランスだった・・・


貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−3    技術開発センター

開発の2

 次に苦労したのがゼンマイの取っ手だ。大きくて目立つ方が面白いが、重すぎるのは不可。回転ユニットが破損しては元も子もない。背中に取り付けるのだから当然周りにぶつかるだろうが、そのときに周囲の人が怪我するような危険なものでは困る。かといって柔らか過ぎてたわんだりしては格好悪い。あくまで金属的な質感が欲しい。
 色々と調査した結果、夢のような素材を見つけることに成功した。幅30cmの板でも自重によるたわみはほとんどなく、かつ重量も許容範囲。力がかかった際には多少たわむので、周囲に対して破壊的でもない。金属的な質感を持たせることにも成功した。
 軸への取り付けも苦労した点だ。田宮○○のキットには6角のシャフトが採用されていたが、このシャフトの軸を通るように板を取り付けるパーツはどこにもなかった。キットに付属のクランクを加工する、固定パーツを自作するなど色々と検討したが、幹部の結婚式までもう時間がない。電線を壁に固定する金具を流用することにした。強度が弱いのが気になるが、頑丈すぎて周囲を破壊するよりはマシだろう。
 こうして製作を始めたが、普段やりなれていないことなので時間がかかる。使用する工具を探し出し、手に入れながらの作業が続いたのだった。


   この物語は、フィクションであり、実在する人物、自主企画、地名、そのほかの固有名詞や事実などとは何の関係もありません。うそ八百です。どっか似ていたとしても、それはたまたま確率の問題です。

貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−2

ルーブルの広いフロアでどこからともなくコーヒーの香りが漂ってきたら、貴女は我々のすぐそばにいるのかもしれない


貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−2    技術開発センター

開発の1

 マッドサイエンティストカフェ・みなとみらい店は大好評のうちに終了した。我々白衣組も最前線に立ち続けたのだが、その後方で我々をサポートしてくれたメイドロボ達は非常にありがたい存在であった。私は閉店後もゼンマイ可動化の夢を実現すべく、何かゼンマイに使えるものはないか、流用できるものはないかと事ある毎に調べていた。だがしかし、である。皆さんもご存知のようににカフェが見事なまでに炎上してしまった。辛くも脱出してルーブル地下に秘密基地を築いたものの、もはや活動する元気は残っていなかった。私も活動できなくなって、悶々とした1年が過ぎてしまった。
 急に入った知らせは、幹部が結婚するというものだった。久々にメンバーが集まる。そのとき私の頭に恐ろしい考えが浮かんでしまった。
「この機会に、ちゃんと回るゼンマイを作りたい。幹部達が喜んで元気になってくれれば。」
 サプライズとして極秘裏に開発し、当日いきなり公開する方が面白い。早速、使えるユニットを探し始めた。
 既に既製品からの流用はあきらめていたので、正面からパーツとして探すことにした。条件は回転数がゆっくり(1〜2回転/秒くらい)であること。軽量(メイドロボが付けるため)かつ安価(悪の組織にはスポンサーが付かない)であること。半時計回りであること。工作キットについて検索していたところ、見事に探し当てることが出来た。
 それは、○○模型のキットだった。早速入手して組み立ててみたところ、回転数、形状、重量共に申し分ない。値段は当初考えていたよりは高かったが、それでも充分に手の届く範囲だ。単三電池一個で動作するのもいい。こうして、私費を投じた研究開発が始まったのだった。


   この物語は、フィクションです。

貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−1

「眼鏡時空」にてゼンマイの反響があまりに大きかったので、連載してみる。不定期、数回の予定。

貴女の妄想叶えます −ゼンマイ開発記−1    技術開発センター

プロローグ 出会い

 その日、私は悪の組織「マッドサイエンティスト・カフェ」で面接を受けていた。長年人々の平和と安全を守る研究所に勤務してきたが、正義の仕事の限界を感じていた。これからは、違う立場からの活動を始めよう。

 カフェに入ってまず目に付いたのは、かわいいメイド服を着たメイドロボ達だ。白衣の博士たちの姿は私には見慣れたものだったが、メイドロボ達の背中に大きなゼンマイが付いているのはとても印象的だった。見ると、テーブルの上では1台、大きなゼンマイがゆっくりと回っていた。このゼンマイを作ったという幹部と話すことが出来た。
「これ、時計のムーブメントの秒針に付けてるんですよー。だから、背中にはつけられないんですー。」
 確かに、メイドロボ達の背中のゼンマイは回っていなかった。
「できれば、ちゃんとゼンマイが戻る向きに回るのが作れるといいんですけどねー。」

 面接は非常に厳しいものであったが、幸い私は合格することが出来た。そしてカフェでの活動を始めたが、この時の幹部の言葉はずっと頭にこびりついていた。メイドたちの背中のゼンマイがちゃんと動いていたら、それはサイバーな光景に違いない。そんな光景を見てみたいと強く想ってしまったのだった。


   この物語は、フィクションです。
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